第17章 姫巫女とドラゴン
それから、薬草学の教室へ向かう間、ロンとハーマイオニーはずっと言い争っていた。やがて、とうとうハーマイオニーも折れ、午前の休憩時間に急いで小屋に行くことになった。
授業終了の合図が鳴るや否や。シオンはヒマワリたちに、今朝のハグリッドの用事の件だと断りを入れ、ハリーたちと合流した。
校庭を横切り、四人は森の外れにあるハグリッドの小屋へ急いだ。
ハリーが小屋のドアを叩いて来訪を知らせると、ハグリッドは頬を紅潮させながら四人を迎えてくれた。
テーブルの上にある黒い卵を示され、シオンはドキドキと覗き込む。深い亀裂が入り、中で何かが動いているのか、時おりコツンコツンと乾いた音が聞こえた。
そして唐突に、殻を引っ掻いたのか、キーッという音がして、卵がパックリと割れ、ドラゴンの赤ちゃんが出てきた。
「この子が……ドラゴンの赤ちゃん……?」
初めて見たが……言葉もなかった。
月映は生まれた頃からあの姿のため、ドラゴンの赤ちゃんを見たのは初めてだった。しかし、想像していたものとは全然違う。
とても可愛いとは表現できない。黒く細い身体、手足は折れそうで、骨っぽい翼が背中から伸びている。鼻は長く、こぶのような角が生え、出っ張ったオレンジ色の目がギョロリと動いたときには、思わず悲鳴を上げそうだった。
「素晴らしく美しいだろう?」
ハグリッドが嬉しそうに手を伸ばすと、赤ちゃんドラゴンがくしゃみをした反動で小さな火が爆ぜ、彼のもじゃもじゃのヒゲに引火した。
「おぉっと、まずは躾からだな」
慌ててヒゲの火を消すハグリッドをハーマイオニーが呼んだ。
「ノルウェー・リッジバック種って、どれくらいの早さで育つの?」
ハグリッドが答えようと口を開いた瞬間、金色の軌跡が宙に現れた。
『誰だ⁉』
誰何(すいか)の声を上げた月映に、シオンも振り返る。
弾かれたように立ち上がり、ハグリッドが窓際に駆け寄った。シオンやハリーも後に続くが、そこには誰もいない。しかし、ハグリッドの顔はひどく青ざめていた。