第17章 姫巫女とドラゴン
「ハグリッド、窓を開けてもいい? 茹立(ゆだ)っちゃうよ」
「悪いな。それはできん」
そう言って、ハグリッドはチラリと暖炉へ視線を向けたことに気づいた。
「ハグリッド――あれ……ドラゴンの卵だよね? どうしたの?」
そう尋ねながらも、シオンにはおおよその見当がついている。ゴウゴウと燃える炎の中、やかんの下には黒く大きな卵があった。
「えーと、それは……その……」
気まずそうに、ハグリッドは言葉を濁しながら、もじゃもじゃのヒゲをいじる。
「ハグリッド、どこで手に入れたの? すごく高かったろう?」
ロンは立ち上がり、暖炉の傍に屈みこんで卵を覗き込んだ。
「賭けにかったんだ。昨日の晩、村まで言って、ちょっと酒を飲んで、知らない奴とトランプをしてな。はっきり言えば、そいつは厄介払いして喜んでおったな」
「だけど、もし卵が孵ったらどうするつもりなの?」
「それで、ちぃっと読んどるんだがな」
ハグリッドが枕の下から大きな本を取り出した。
「図書館から借りたんだ――『趣味と実益を兼ねたドラゴンの育て方』――もちろん、ちぃっと古いが、何でも書いてある」
母龍が息を吹きかけるように卵は火の中に置け。
孵ったときには、ブランデーと鶏の血を混ぜ、三十分ごとにバケツ一杯飲ませろ。
「それと、ここを見てみろや――卵の見分け方――俺のはノルウェー・リッジバックという種類らしい。こいつが珍しい奴でなぁ」
嬉しそうに語るが、ドラゴンを飼うのは違法だ。それに、生まれたときこそ小さいが――……。
「ハグリッド、この家は木の家なのよ」
ハーマイオニーが呆れたように言うが、ハグリッドの耳には届いていないようだった。
* * *