第17章 姫巫女とドラゴン
「ハグリッド、どうしたの?」
シオンが首を傾げた。
言ってはいけないかもしれないが、ハグリッドと図書室はあまり関わりがなさそうに思える。
「まぁ、ちょっとな。お前さんたちは何をしてるんだ? まさか、まだニコラス・フラメルを探しとるんじゃないだろうな」
誤魔化すような話題転換に感じたが、ハグリッド自身が気にしていたことのようにも思えた。
「ニコラス・フラメルのことなら、もうとっくの昔に分かったさ!」
「それだけじゃない。あの犬が何を守っているかも知ってるよ。『賢者のい――』」
得意げに話すハリーとロンに、ハグリッドは「シーッ!」と慌てて止める。
周囲を気にしながら、身を屈めつつ声を潜めた。
「そのことは大声で言い触らしちゃいかん。お前さんたち、全くどうかしちまったんじゃないか」
よほど大事な問題なのだろう。
ハグリッドの警戒の仕様から見ても、それは明らかだ。
「ハリー、もうこれくらいにして、勉強に戻ろう? ほら、まだ課題も終わってないし」
「待って、シオン。ハグリッド、もう一つ教えて? フラッフィー以外にあの石を守っているのは何なの?」
ハリーの問いに、ハグリッドは「シーッ!」と再び止める。
「分かった。いいか――後で小屋に来てくれや。ただし、教えるなんて約束はできねぇぞ。ここでそんなことを喋りまくられちゃ困る。生徒が知っているはずはねーんだから。俺が喋ったと思われるだろうが」
実際、シオンたちが事件の真相に踏み込めたのは、ハグリッドの失言がきっかけなのだが、それは言うまい。
去っていくハグリッドを見送ると、ずっと黙っていたハーマイオニーが身を乗り出す。
「ハグリッドったら、背中に何を隠してたのかしら?」
「もしかしたら、石と関係あるんじゃない?」
ハリーがそう言うと、ロンが「ちょっと見てくる」と席を外した。
どうやら、ハグリッドがいた書棚を見に行ったようだ。
しばらくして、ロンがどっさりと本をテーブルに置く。
ザッと見たところ、ドラゴンに関する本だ。