第17章 姫巫女とドラゴン
クィディッチの試合で、グリフィンドールがハッフルパフに史上最速で勝利してから数週間が経った。
『賢者の石』に関して目立った動きはない。
クィレルもスネイプに口を割った形跡もなく、四階廊下のフラッフィーも相変わらず扉を守っている。
ある日、シオンはハリーやロン、ハーマイオニーと一緒に図書室にいた。シオンと同室の四人は、各々用事があるらしい。
シオンは羽ペンを走らせながら、魔法薬学の課題をこなしていく。
その隣では、ハーマイオニーは早々と課題を済ませて試験の予習をしていた。
しかし、その試験はまだまだ先のものである。
「ハーマイオニー、試験はずーっと先だよ」
「十週間先でしょ。ずーっと先じゃないわ!」
ハリーがそう言うと、彼女は焦ったような上ずった声で訂正した。
ニコラス・フラメルの時間にしたらほんの一瞬だと、ハーマイオニーは厳しく言う。
目の前の課題でいっぱいいっぱいなシオンやハリーたちにしてみれば、本当ならば課題や試験よりも気になっていることがあるのだ。勉強まで気が回らない。
「だいたいさ、何のために復習するんだよ。君はもう、全部知ってるじゃないか」
「何のためですって? 気は確か? 二年生に進級するには試験をパスしなけりゃいけないのよ。大切な試験なのに、私としたことが……もっと早くに勉強を始めるべきだったわ」
三人のやり取りを眺めながら、シオンは黙々と課題を進めた。
「シオン、この『ハナハッカ』って、どこに載ってたっけ?」
「んーと……『ハナハッカ』はね、『薬草ときのこ千種』の……えーっと……」
ハリーと教科書を覗き込む。
最近見たはずだったのたが、どのページだったか忘れてしまった。
すると、唐突にロンが「ハグリッド!」と呼びかけて立ち上がる。
シオンとハリーが反射的に顔を上げると、二人の視線の先にその巨体が飛び込んできた。
彼はどこか気まずそうな表情をしながら、背中に何かを隠す。