第5章 姫巫女と最初の友達
「じゃあ、改めて。僕はジョージ・ウィーズリーで、こいつがフレッド・ウィーズリー。そいつが、弟のロン。君は?」
「龍……じゃなくて、シオン・リュウグウです……」
苗字を先に言おうとして、シオンは言い直した。
英語圏では、ファーストネーム――下の名前が先だ。
「リュウグウ……確か、極東の島国にある名家か。よろしく、シオン」
双子に手を差し出され、シオンは再び、それぞれの手をおずおずと握り返した。
「「じゃ、またあとでな」」
仲良く声を揃えた双子が、コンパートメントの扉を閉める。
訪れた静寂に、三人は互いに顔を見合わせた。
自分で自己紹介をする前に自己紹介が終わってしまった。
そこへ、ロンが話を切り出した。
「君、ほんとにハリー・ポッターなの?」
ロンの問いに、何の確認なのかと戸惑いつつ、ハリーは一つ頷く。
「ふーん……そう。僕、フレッドとジョージがまたふざけてるんだと思った。じゃあ、ほんとにあるの? ……ほら……」
ロンがハリーの額を指差した。
それだけで、彼が何を求めているのかは明らかだ。
ハリーもすぐに分かったらしく、彼は黒い前髪を搔き上げる。
見間違いなどではない。
そこには、先ほど見たばかりの稲妻の形を傷が刻まれていた。
目の前に、誰もが憧れる『ハリー・ポッター』がいるというのに、シオンの心はどこか冷めきっている。
それは、父の言葉が胸にあるからだ。
シオンがぼんやりしている中でも、二人の話は続いた。