第16章 姫巫女と真相への一歩
「ぼ、ぼくは……ぼくはグリフィンドールの生徒だ! おまえが何を言ったって、ぼくを認めてくれている人たちがいるんだ!」
震える声で反論するネビルに、マルフォイたち三人は声を上げて嗤った。
「ロングボトム。もし、脳みそが金でできてるなら、君はウィーズリーよりも貧乏だ! つまり、生半可な貧乏じゃないってことさ!」
「何ですって⁉ マルフォイ! あんた、それ以上口を開いてみなさい! ただじゃすまさな――」
「ハリーッ!」
我慢ならないと声を荒げるマリアを、シェリルが遮る。
ネビルの方を気にしながらも試合を観続けていたシェリルに、シオンたちは空を飛んでいるハリーを探した。
「何? どこ?」
思わず手すりから身を乗り出すロンに、シェリルは「あそこ」と指を差す。
その先では、ハリーが弾丸のような勢いで急降下していた。
その技術に、観客たちは立ち上がり、大歓声を上げる。
「運がいいぞ! ウィーズリー、ポッターはきっと、地面に金が落ちているのを見つけたにちがいない!」
「マルフォイ!」
その言葉に、ついにロンが切れた。
ロンはマルフォイに馬乗りになり、地面に組み伏せる。
「ロンくん! 暴力はダメです!」
「離せ、シャーロット!」
「ですが!」
しかし、止めるシャーロットを振り切って、ロンはマルフォイの胸倉を掴んだ。
ネビルは一瞬怯むものの、ついには助勢に加わる。
「シャーロット、止めることないわ! 言って分かんないやつには力が必要なのよ!」
「シオンさま、巻き込まれては大変ですわ。もう少しこちらへ」
「ヒマワリ……」
「行けっ! ハリー!」
ハーマイオニーが椅子の上に立ち上がり、声を張り上げた。
猛スピードで空を駆けるハリーに、シオンは手すりを強く握り締める。
気がつけば、ロンとマルフォイの取っ組み合いも、ネビルがクラッブとゴイルに立ち向かっていることも、助勢に加わろうとするマリアをシャーロットが止めていることも、シオンの意識から遠くなっていた。
ハリーを狙ったブラッジャーをグリフィンドールの選手が弾き飛ばす。
「ジョージさん!」
シオンの声に、ジョージは片手を上げて応じた。