第16章 姫巫女と真相への一歩
「この試合は、ハリーがどれだけ早くスニッチを捕まえられるかにかかってる。一秒でも早く試合を終わらせないと、ハッフルパフがどんどん有利になるから」
シェリルの解説に、シオンは目を凝らした。
ハリーはスニッチを探しているのか、上空の高い位置をぐるぐると旋回している。
「そういえばさ!」
マルフォイが聞こえよがしに声を上げた。
「グリフィンドールの選手がどういう風にクィディッチの選手に選ばれているか知ってるかい?」
いきなり何の話を始めようというのか。
グラウンドではちょうど、スネイプが何の理由もなくハッフルパフへペナルティーシュートを与えたところだった。
「気の毒な人が選ばれているんだよ。ポッターも両親がいないし、ウィーズリー 一家はお金がないし……ネビル・ロングボトム。君もチームに入るべきだね。脳みそがないから」
唐突に話を振られたネビルの肩が、ビクリと跳ねる。
「マルフォイ! あんた今、ネビルをバカにしたわね!」
そのことに真っ先に反応したのは、高所恐怖症に身体を震わせていたマリアだった。
「なんだい、クレイミー。そんなに怒るなんて、ロングボトムに気でもあるのかい?」
「だったら何⁉ 下世話な話と悪口が大好きなあんたより、誰かのために一生懸命になれるネビルの方が、ずっと素敵だわ!」
思わず椅子から立ち上がったマリアが、マルフォイに詰め寄る。
「バカにしないでよ! ハリーも、グリフィンドールの選手たちも、あんたに貶められるほど落ちぶれちゃいないのよ! しっかり、その実力を認められてグラウンドに立ってるんだから!」
「何だと? 僕があいつらに劣っているとでもいうのか⁉ 純血を捨てて《穢れた血》を受け入れた半純血のくせに、僕に偉そうなことを言うな!」
「マリアちゃん!」
シャーロットの声に、試合を観ていたシオン、ヒマワリ、シェリルたちが振り返った。
ロンとハーマイオニーも、試合から視線を移す。
マリアの言葉に怒ったマルフォイは、少女の胸倉を掴もうと手を伸ばした。
「ま、マリアに触るな!」
最初、誰が言ったのか分からなかった。
けれど、一拍遅れて理解する。
ネビルがマルフォイの手を払い、マリアを庇ったのだ。