第16章 姫巫女と真相への一歩
「この試合、ポッターはどのくらい箒に乗っていられるかな? 誰か賭けるかい? ウィーズリー、君はどうだ?」
挑発するようなマルフォイの言葉だったが、ロンは無視することにしたようだ。
シオンも、それが一番だと思う。
しかし、シャーロットは黙っていられなかったようだ。
「マルフォイくん! ハリーくんをひどく言うのは止めて下さい!」
「なんだよ、ルシアーノ。だったら、お前は『試合終了まで乗っていられる』に賭けたらいいじゃないか」
「誰かを賭けの対象にするなんて、そんなことしません!」
シオンもどうにかマルフォイを追い払うのに加勢しようとしたが、ヒマワリが小さくローブを引っ張って止めてきた。
「シオンさま。マルフォイのバカはシャーロットに任せておきましょう? シオンさまが言ったところで引く相手ではありませんわ」
「で、でも……」
その先に続く言葉を持っていたわけではなかったが、続けることもできなかった。
ワッと沸いた観客たちの視線の先では、ハッフルパフにペナルティーシュートが与えられたのだ。
ジョージ・ウィーズリーが、ブラッジャーを審判である自分に向けて打ったとスネイプが判断したらしい。
きっと、たまたま打った先にスネイプがいたか、なだれ玉が飛んできたかのどちらかだろう。
ブラッジャー自体、『暴れ玉』の異名通り、自分で好き勝手に跳ねるのだ。
ジョージに非があるかどうかの断言などできないだろうに。
「ジョージさん……」
シオンは無意識に、彼の名前を呟いていた。
マルフォイの相手は完全にシャーロットに一任されたようで、シェリルは前屈みになって試合を観ている。
マリアに関しては、自分の中の恐怖と戦っているようで、隣に座るネビルの手をギュッと握って眉間にシワを寄せていた。