第16章 姫巫女と真相への一歩
「シオンさま、何かありました? お顔が真っ赤ですわ」
「う、ううん! 何もないよ!」
観客席にいる同室の四人と並ぶように、シオンは曖昧に笑って誤魔化しながら、ヒマワリの隣に座った。シャーロットの隣には、高所恐怖症で顔を青くするマリアの姿がある。
「いいこと、忘れちゃダメよ。《ロコモーター・モルティス》よ」
「分かってるったら。ガミガミ言うなよ」
後ろの席で、ロンとハーマイオニーが、何やら杖を持ってひそひそと話している。ネビルも隣に座っているが、彼は参加していないようだ。
「あなたたち、いったい何をやっていますの?」
「《足縛りの呪文》を練習したんだよ。マルフォイがネビルに使った呪文」
「スネイプが不審な動きを見せたら、この呪文でスネイプを妨害するのよ」
得意げに語る二人に、ヒマワリが呆れた表情を見せた。
「ロンもハーマイオニーも心配しすぎ。ほら、あそこ見て」
シェリルが指で示した先には、長い髭を持つ老人が座っている。
「まぁ、ダンブルドア校長先生です!」
パチンッとシャーロットが手を叩き、少しはしゃいだ声を上げた。
アルバス・ダンブルドアは魔法使いの憧れだ。
「いくらスネイプでも、ダンブルドア先生の前で何かできるわけがない」
確かに、とシオンも心の中で頷いた。
スネイプが何かするかどうかは分からないが、ハリーを狙う輩も妙な真似はできないだろう。
やがて試合が始まる。
いっせいにボールをめがけて、選手たちが箒で飛び上がった。
それを観ていると、「いてっ!」とロンが声を上げる。
振り返った先には、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべたマルフォイが、子分のクラッブとゴイルの二人を引き連れて立っていた。