第5章 姫巫女と最初の友達
訪ねて来たのは、赤毛の少年――ロンだった。
「ここ、空いてる? どこもいっぱいなんだ」
「うん。君もいいよね?」
「……はい。どうぞ」
緊張しながら言葉を紡ぐと、ロンはハリーの隣へ腰を下ろす。
ハリー・ポッターだと聞かされたからか、赤毛の少年はハリーを気にしているようだった。
「おい、ロン」
赤毛の双子――フレッドとジョージが戻って来る。
「なぁ。僕たち、真ん中の車両辺りまで行くぜ」
「何でも、でっかいタランチュラを持ってきてるヤツがいるんだ」
タランチュラと言えば、大きなクモのことだ。
クモが苦手なのか、ロンはサッと顔を青くして「分かった」と小さな声で頷いた。
そこへ、双子の片割れの瞳がシオンを捉える。
「キングズ・クロス駅でぶつかった子だね。魔法族だったんだ」
「あ、はい……さっきは荷物を運ぶのを手伝ってもらって……ありがとうございます、フレッドさん」
まるで自分とぶつかったように話す相手が、実際にぶつかったわけではないフレッドであることは、すぐに分かった。
双子が顔を見合わせ、ジョージの方が「ほらな」とフレッドに声を掛ける。
「やっぱり。彼女、僕とフレッドを見分けられるんだ」
気づけば、ロンも目を丸くしていた。
「すごいや。僕たち家族でも見分けがつかないのに!」
驚くロンやフレッドに、シオンは身体を小さくする。
自分としては、大したことをしているわけではない。
ただ、相手を認識して話しているだけなのだ。