第16章 姫巫女と真相への一歩
「……ハリー、寝不足なの?」
朝食を摂るシオンたちの中で、シェリルがハリーに心配そうな声を掛けた。
ハリーを見れば、やや青い顔をしている。
新学期が始まり、クィディッチの練習も始まった。
もしかしたら、練習がキツイのかもしれない。
しかし、そうではないとハリーは首を振った。
「実は、毎晩悪夢を見るんだ。誰かが高笑いしてて、緑色の光と一緒に消える……そして、僕はそれが怖くて飛び起きる」
最近は、それを繰り返し視るのだとハリーは言った。
「夢と現実は深い関わりがあるといいますし、何か心配事でもあるんじゃないですか?」
「そりゃあ、あるでしょうね。だって、今度の対ハッフルパフ戦の審判は、スネイプ先生がやるんでしょ?」
シャーロットとマリアの言葉に、ハリーではなくロンとハーマイオニーが渋面を作った。
「そうだ! きっと、それが悪夢の原因だよ」
「そうね。ハリー、試合に出ちゃダメよ。きっと、悪夢もそれを言っているんだわ。そうでしょ、シオン?」
「えっと……」
シオンは答えられなかった。
誰かの高笑い、緑の光……それを聞いて思い出したのは、ハリーと初めて会ったときのコンパートメントで、ロンが彼に傷について尋ねたときのことだった。
何も覚えていないけれど、緑色の光を見たような気がする、と。
悪夢が暗示しているのは、名前を呼んではいけない『例のあの人』が関わっていることではないだろうか。
しかし、そんな話ができるわけもない。
「でも、グリフィンドールのシーカーはハリーだけ。補欠はいない。ハリーが出場しなかったら、グリフィンドールはプレイできない」
なるほど、とシェリルの言葉にシオンは頷く。
代わりがいない以上、ハリーが出場するしかないわけである。
「あの先生はグリフィンドールとハリーを目の敵にしていますし、プレイ中に少しでも隙を見せようものなら、すぐに減点してこようとするでしょうね」
ヒマワリの言うことには納得だ。
スネイプはグリフィンドールにとって、お世辞にもいい教師とは言えない。
フェアな審判などするつもりもないだろう。
スリザリンがグリフィンドールに負けた今、寮対抗杯をグリフィンドールに渡さないよう画策してくるはずだ。