第16章 姫巫女と真相への一歩
「シオンさま、いかがです?」
『フンッ、子どものお遊びだな。呪力も弱い。この程度の呪いを祓うなど、シオンには造作もなかろう』
「月映さま、あまり気負わせないで下さい」
ヒマワリの気遣いを鼻で笑う月映にそう言って、シオンはネビルの足元で腰を下ろした。
「……《神の御息(みいき)は我が息、我が息は神の御息(みいき)なり。御息(みいき)を以て吹けば呪詛は在(あ)らじ、残らじ。阿那清々(あなすがすが)し、阿那清々(あなすがすが)し》……」
神の御息は我が息……と歌うように三度繰り返したシオンは、強い調子でネビルの両足に息を吹きつける。
やがて、ネビルの両足はパッと離れ、彼は震えながら立ち上がった。
「すごい、シオン!」
「さすが、シオンさまですわ!」
「ねぇ、今のどうやったの? 魔法?」
ロンが手を叩き、ヒマワリが賞賛し、ハーマイオニーが目を輝かせる。
「今のは『息吹法』って言って、息を吹きつけることで穢れを祓う術だよ。それより……」
そのシオンの言葉を遮り、マリアがネビルの両肩を掴んだ。
「ネビル、マクゴナガル先生のところに行くわよ! マルフォイにやられたって報告するんだから!」
しかし、ネビルは力なく首を振って「イヤだ」と拒否を示す。
「面倒にしたくない。言いつけたら、またヒドイことされるに決まってる」
ネビルの言うことは分かる。
マルフォイの性格を考えれば、言いつけたと分かればさらに攻撃してくるだろう。
「でも、やられっぱなしは癪」
「そうですね。少なくとも、こちらも相応の態度を見せないと、マルフォイくんも引き下がってはくれないでしょう」
シェリルとシャーロットが言うが、それでもネビルは首を振った。