第15章 姫巫女と大祓儀式
そんな娘の意志が伝わったのか。
父は「そうか」と小さく息を吐いて、静かな瞳でシオンを見た。
「アルバス・ダンブルドアの古い友人に、そんな名前の錬金術師がいたような気がする。うろ覚えの記憶だから、当てになるかは定かではないが」
「錬金術師……ニコラス・フラメル……」
ハグリッドがニコラス・フラメルの名前を出したときのことを思い出した。
彼は何と言っていた?
確か……。
――「……忘れるんだ。あれはダンブルドアとニコラス・フラメルの……」
そういうことか、とシオンは妙に納得した。
錬金術師だから、魔法や魔法使いの資料を探しても見つからなかったのだ。
「ありがとうございます、父上!」
「……用が済んだなら早く寝ろ。ヒマワリが待っているのだろう」
父に頭を下げ、シオンは急いで自室へ戻った。
* * *
「シオンさま、何をされていらしたの? 待ちくたびれてしまいましたわ」
「ご、ごめんね、ヒマワリ」
自室へ戻ったシオンは、自分の髪を櫛で丁寧に梳くヒマワリに謝り、急いで紙鳥を用意する。
「こんな時間に手紙を書かれますの?」
「うん。忘れないうちに……きっと、待ってると思うから……」
父に聞いたことを簡潔に記載し、二人分の紙鳥を作った。
一つはハリーとロン、もう一つはハーマイオニーの分だ。
紙鳥は名前に『鳥』が入っているが、鳥目というわけではないので、夜に飛ばしても問題はない。
シオンは窓から外へ紙鳥を放つ。
まるで命があるように動く白い鳥は、パタパタと羽を動かして、本物の鳥のように白い軌跡を描きながら海の向こうと飛び立った。