第15章 姫巫女と大祓儀式
ニコラス・フラメルがどう関わっているのだろうか。
この事件は、いったいどこへ向かうのだろうか。
ケルベロスは何を守っているのだろうか。
いったい誰が、何を、何のために狙っているのだろうか。
そんなさまざまな疑問が、一斉にシオンを襲う。
「シオンさま」
ヒマワリの声に、シオンは我に返った。
「あ、ごめん。なに、ヒマワリ?」
首を傾げて問えば、彼女はギュッとシオンを抱きしめる。
「え? どうしたの?」
突然の行動に驚くのと同時に、この抱擁がいつもの過剰なスキンシップとは違うと感じ、シオンはヒマワリの細い肩に触れて受け入れた。
「……シオンさま。何か困っていることはありませんか? あたくしにできることはありませんか? シオンさまの……」
……力になれることはありませんか?
切ない声音に、シオンの胸が締めつけられる。
賢い彼女は気づいているのだ。
シオンの置かれた状況に。
「ヒマワリ……」
「あたくし、習いたてで使える魔法は少ないですわ。ハリーほど箒も乗りこなせませんし、ロンのようなユーモアもない、ハーマイオニーほど頭がいいわけでもありません。《龍宮の異能》もほとんど使えませんし……。ですが……」
ですが、と彼女はもう一度言って続けた。
「それでも、あたくしは……シオンさまのお力になりたいのです……!」
ヒマワリは縋るようにして、泣きそうな瞳でシオンを見る。
「シオンさまは、いったい何をされていますの? 何か、危険なことに巻き込まれているのではありませんか? もしそうなら、すぐに手を引いて下さい。それができないのなら、せめて……せめて、あたくしの力も使って下さい。シオンさまが望むなら、あたくしはどんなことだってやってみせますから」
お願いします、と懇願するヒマワリに、シオンは何も言えなかった。
彼女を巻き込むことはできない。
危険だと分かっているからこそ、巻き込むわけにはいかないのだ。