第15章 姫巫女と大祓儀式
気がつけば、二人は母屋の玄関まで来ていた。
無我夢中で走ったために、シオンの息は切れてしまっている。
ヒマワリの手を離し、シオンは軽く息を整え、ヒマワリを振り返った。
彼女も、胸に手を当てて呼吸を整える。
「シオンさまったら、どうしましたの?」
「どうって……だって、あの人たちがヒマワリのこと……!」
そこまで言いかけて、シオンは言葉を呑み込んだ。
ヒマワリが、まるでシオンの言うことが理解できないと、首を傾げたからだ。
彼女だって、聞こえなかったはずはない。
彼らはこれ見よがしに、ヒマワリにも聞こえるようにして言っていたのだから。
龍宮の、本家に近い人間は特に、選民意識が強い。
そして今回、ホグワーツへ入学できたのはシオンとヒマワリだけだった。
年々、入学できる人間は減り、とうとうたったの二人だけ。
それほどまでに、龍宮の人間の霊力――魔力は弱まっているのだ。
しかし、だからといって、そのことへの不安や妬みを、ヒマワリへぶつけることを許せるわけがない。
――よわむし……結局、わたし、何も変わってない……。
「シオンさま……?」
黙ってしまったシオンを、ヒマワリが不安そうに呼んだ。
シオンは内心で首を振り、自分の中で渦巻く様々な感情を無理やり追い払う。
「な……何でも、ない! 行こ、ヒマワリ。父上が待ってる」
そう言って、シオンは母屋の玄関を叩いた。
* * *