第15章 姫巫女と大祓儀式
シオンはヒマワリと共に父の部屋を訪れた。
廊下に膝をつき、軽く戸を叩く。
「入れ」
威厳のある声に入室の許可をもらい、ゆっくりと静かに戸を開いた。
二人は一度頭を下げ、龍宮本家当主の部屋へと入る。
「座りなさい」
シオンが座ると同時に、ヒマワリもシオンの後ろへと腰を下ろした。
再び頭を下げた二人の少女に、当主は「面(おもて)を上げよ」と言う。
「よく戻った、シオン。そして……」
当主がヒマワリへと黒く鋭い目を向けた。
「辰上 向日葵、だったな。シオンから紙鳥で知らされている」
「お会いできて光栄に存じますわ、ご当主」
深く頭を下げようとするヒマワリを当主は制する。
当主は分家の人間たちのように、ヒマワリを無視するようなことはしない。
そのことがシオンは嬉しく、同時に誇らしかった。
「あの、父上……ヒマワリが、儀式の準備を手伝ってくれると言っていて……」
「ならば、お前の禊を手伝わせよう」
当主が視線を部屋の外へ向けると、わらわらと影が動き出した。
いくつかの影が重なっているようだが、それを差し引いても人間が集まっているようには見えない。
そのことには触れず、当主は静かに指示を出す。
「この娘も禊の準備を手伝うそうだ。使ってやれ」
『『『御意!』』』
一斉に返事をしたかと思うと、パ――ンッと戸が開かれた。
「きゃっ!」
入って来たのは大勢のきつねやたぬき、他にも女性の姿をした――まぁ、全員が妖怪なわけだが。
彼らはシオンににっこりと笑顔で頭を下げつつ、一直線にヒマワリを襲撃する。