第14章 姫巫女とクリスマス
「ほら、似合う。申し訳ないと思うなら受け取ってよ」
「あ、ありがとう……ございます……」
シオンは「わたしも用意していて」と言おうとして、やはり言えなかった。
ローブに入れた手が止まってしまう。
「君も僕に用意してくれたの?」
何かを取り出そうとした少女に気づき、ジョージが期待を込めた目を向ける。
「えっと……でも……大したものじゃ……」
「そんなの関係ないよ。シオンがくれるなら、たとえ石ころだって嬉しいさ」
極端なたとえ話だとは思ったが、別に石を渡そうなどとは思っていない。
それでも、彼の想いが伝わって、シオンはくすぐったい気持ちになる。
少女はローブから紐を取り出した。
赤と紫が絡まり合い、金色の糸が織り込まれ、ところどころに小さな石が飾られている。
「手首につける飾り紐です。効果はそれほど強くありませんが、『幸運』と『守護』のまじないが施してあります。……もらって、くれますか?」
相手の反応を窺うように恐る恐る見上げると、ジョージは口元を隠すように手を当てていた。
「シオンが、作ってくれたの? 僕のために……?」
「あ……その…………はい……」
最後の返事だけ、少し小さくなってしまう。
すると、ジョージは突然シオンを抱きしめた。
「きゃ……っ」
微かに悲鳴を上げたシオンに、彼は構うことなくギュッと力を込める。
「嬉しい! ありがとう、シオン!」
少女を解放したジョージは、シオンから飾り紐を受け取り、自分の腕に結んだ。
「一生、大事にする」
「あ、あの……! わ、わたしも……大切にします!」
胸がバクバクと暴れる。
ヒマワリたちを待たせているというのに、彼の傍を離れがたいと思っている自分がいた。
いったい、この気持ちはなんなのだろう。
分からない、けど……。
もう少しだけ、このままでいさせて――……。
* * *