第14章 姫巫女とクリスマス
それから、瞬く間に時間は過ぎていき、いよいよ帰省する日が訪れた。
生徒たちはキャリーバッグに荷物を詰め込み、次々と寮を後にしていく。
ホグワーツに残るハリーとロンは、談話室でチェスをしているようだった。
シオンはヒマワリたち四人にハーマイオニーを加えたメンバーで寮を出ようとして、二人の姿を見つける。
「ナイトをEの5へ」
ズ…と黒い馬の形をした駒が、チェス盤の上を動いた。
それを見たロンは、一拍を置くことなく、「クイーンをEの5へ」と宣言する。
白いクイーンが動き、椅子に座った女性が立ち上がり、椅子で黒のナイトを叩き壊した。
一人でに動いたロンの白い駒が、ハリーの黒い駒を破壊する。
「何よ、これ。野蛮じゃない!」
そう言ったのはハーマイオニーだ。
「魔法使いのチェスだよ。知らないの?」
魔法使いのチェスは、駒の形やルールなどはマグルのものと変わらない。
ただ、駒に魔法が掛けられており、プレイヤーが動かさなくても自分で動き、相手の駒を取るときは武器で破壊する。
喋ることもでき、プレイヤーの力量が伴っていないと、自ら意見することもあるようだ。
「ロンくん、チェスが強いんですね。全く隙がありません」
シャーロットの言葉に、シェリルが「分かるの?」と尋ねる。
「はい。父に習いましたから。ほら、ここ。キングが危ないからここのビショップを動かすでしょう?」
すると、右手側にあるクイーンが取られてしまう。
クイーンは全方向にどこまでも突き進む最強の駒だ。
取られてしまえば、不利な戦況がさらに悪化してしまうため、キングではなくクイーンを守るために、ルークを動かす。
そうすると当然、キングが無防備になってしまい……。
「うーん……ここでナイトをキングの前に……あ、でもルークがいるからすぐに取られて……これでは、どちらにしても……」
「そっか……」
アドバイスをもらえず、ハリーが落胆する。
どうやら、すでに詰んでしまっているようだ。
チェスは詳しくないが、将棋とあまり変わらないと聞いている。
今度、シャーロットに教えてもらおう。