第14章 姫巫女とクリスマス
結局、追い立てられるように図書館を出たシオンとハリーは、そのまま廊下でロンとハーマイオニーを待つことにした。
「ねぇ、ハリー。マダム・ピンスなら、どの本に載ってるか教えてくれるんじゃない?」
「ダメだよ。そりゃあ、聞いたら教えてくれるかもしれないけどさ……もしスネイプにバレたら大変だよ。それより、ゲツエイは? 何か知らない?」
ハリーに名前を呼ばれたからか、金色の身体をしならせて、蛇のような姿の龍が現れる。
『残念だが知らぬな。通っていた生徒とは多少の交流があったから、顔と名前程度は知っておるが……それ以外については知らぬ。"ほぐわーつ"やそれに関わることは、そなたらの方が詳しかろう』
「そっか……」
あからさまに落胆するハリーに言葉を掛けることなく、月映はシオンの周りをくるりと飛んで、小さな肩に身体を落ち着かせた。
『焦るでない。焦れば焦るだけ目が曇るぞ。真実を見極める為に必要なのは、冷静な思考だ』
「でも、それでスネイプに先を越されたら……!」
「ハリー……」
シオンはそれ以上言うことはできなかった。
ニコラス・フラメルについて探し始めて二週間が経った今も、事態は一向に進展しない。
そのことに焦燥感を抱いているのだろう。
それはハリーだけでなく、ロンやハーマイオニー、もちろんシオンも同じだ。
ニコラス・フラメルについて占ってもみたが、情報が少なすぎて曖昧な結果しか出なかった。
授業の合間しか、探す時間がないのも厳しい。
探すにしても、マダム・ピンスの厳しい監視のない、ゆっくりとした時間が必要だ。
彼女は先ほどのように、図書館に用事がないと判断した生徒を追い出してしまうのだ。
本を取っ替え引っ換えしていれば、確実に声を掛けられ、返答次第では今のように追い出されるだろう。