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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第4章 姫巫女とホグワーツ行特急列車


「……さて。あなたたち、今年はお行儀よくするんですよ」

 シオンは、この駅へ来る前の双子を思い出す。
 互いの名前を入れ替えてからかうなんて、どうやら序の口だったようだ。

 母の『トイレを吹き飛ばすようなことを』という注意に、手を叩いて喜ぶ。

 弟の面倒を見るように母が頼めば、今度はロンを弄り始めた。

「ねぇ、母さん。誰に会ったと思う?」

 唐突に、双子の片割れが話を切り出す。
 フレッドだ。

「駅の傍にいた黒髪の子、覚えてる? あの子はだーれだ?」

 自分の話題が出たからか、シオンの正面に座るハリーが慌てて身を引く。

「誰?」

 ロンの問いに、フレッドは謎かけの答えを明かすように言った。

「ハリー・ポッター!」

 フレッドの答えを聞いて、ジニーと呼ばれていた少女が母の腕を引っ張る。

「ねぇ、ママ。列車に乗って見てきてもいい?」

 興奮するのも無理はない。
 闇の魔法使いを退けた『生き残った少年』は、魔法界の少年少女の憧れであり、大人ですら敬意を払う存在だ。

「ねぇ、ママ、お願い!」

「ジニー。もうあの子を見たでしょ? 動物園じゃないんだから、ジロジロと見てはダメよ。でも、どうして分かったの?」

 娘を宥めながら尋ねる母に、フレッドが答えた。

「本人に聞いた。傷跡を見たんだ。本当にあったよ、稲妻みたいな傷」

 その説明に、婦人は表情を暗くする。

「『例のあの人』のこと、聞いてみようかな? どんなだったか、覚えてると思う?」

「絶対に聞いてはダメよ! 入学して早々、そのことを思い出させないであげて」

「分かった。そんなムキにならないでよ」

 そこで、発車の合図である笛が鳴り響いた。
 母親に急かされて、フレッドとジョージ、ロンの三人も慌てて乗り込む。

 兄たちが行ってしまうから寂しいのか、ハリーに会えなかったのが悲しいのか、ジニーが泣き出した。
 前者九割、後者一割くらいだろうか。

 窓から身を乗り出して、三人が家族との別れを惜しんだ。
 フレッドとジョージは最後まで冗談が止まらず、母に叱られていた。

 汽車が滑り出すと、たくさんの母親や家族が、各々の子どもたちに手を振る。
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