第4章 姫巫女とホグワーツ行特急列車
コンパートメントを離れようか。
だが、せっかく荷物を運び入れてもらったのに、そんなことができるはずもなかった。
双子が呆然とハリーを見つめていると、開け放たれた窓から声が掛かる。
「フレッド? ジョージ? どこにいるの?」
赤毛の婦人の声だ。
「あ、母さんだ」
「すぐ行くよ」
フレッドとジョージが列車を降りた。
窓際の席に腰を下ろしたハリーの緑の瞳と、立ったままのシオンの黒い瞳が交差する。
「座ったら?」
突然話しかけられ、シオンはビクッと肩を震わせて頷いた。
「は、はい……」
ゆっくりと、ハリーの正面に腰を下ろす。
窓の外では、ホームにいる赤毛の家族がよく見えた。
「パーシーはどこ?」
母の問いに、背の高い少年――ロンが「こっちに歩いて来るよ」と指をさす。
パーシーはすでにホグワーツの制服に着替え、上から羽織ったローブが、彼が歩くのに合わせてひらひらと靡いた。
胸には『P』の文字が入った銀のバッチをつけている。
「母さん、あまり長くはいられないよ。『P』のバッチをつけた監督生は、前のコンパートメント二つが指定席になってるんだ」
そうか。彼は寮の監督生なんだ。
パーシーのどこか落ち着いた雰囲気に、シオンは勝手に納得した。
「さぁ、みんな。楽しく過ごしなさいね。着いたら、フクロウ便をちょうだい」
婦人が、息子たちを一人ずつにしばしの別れを告げる。
パーシーが列車に乗り込んだのを見送ると、婦人は次に双子へ口を開いた。