第4章 姫巫女とホグワーツ行特急列車
シオンの母は、生まれて間もなく死去した。
学校へは通っておらず、少女は聖地である山から出たことがない。
だから、礼儀作法や勉強は、全て父から習ったのだ。
そんな父も、見送りには来てくれない。
心細くはあったが、辛いとは思わなかった。
それは、不器用ながらも、父の優しさを知っているからだ。
シオンが離れがたくなってしまうから、わざと着いて来なかった父の優しさを、シオンは正しく理解していた。
もちろん、それを寂しく思わないわけではない。
ホグワーツへ行きたくはない、という思いが消えたわけでもない。
けれど、父が誇れるような立派な魔法使いになろうと、シオンは気持ちを改めた。
龍宮の姫巫女の名に恥じない人間に、サカキの杖に相応しい人間に、己を変えよう。
そう意気込んでいると、不意にコンパートメントの扉が開かれ、背の高い赤毛の少年が姿を現した。