第13章 姫巫女とクィディッチ
「呪い……ハリーの箒に、闇の呪いが掛けられてる……!」
ようやく、その言葉を絞り出すことができた。
この悪寒も震えも、闇に属する強い力に当てられたものだろう。
それも、自分よりも遥かに強い力を持っている。
シオンの言葉に、真っ先に動いたのはハーマイオニーだった。
ひったくるようにしてハグリッドから双眼鏡を取った彼女に、ロンが不思議そうに眉を寄せる。
「何してるんだよ?」
だが、ハーマイオニーがそれに答えることはなかった。
「……思った通りだわ。スネイプよ。見てごらんなさい」
ハーマイオニーが、双眼鏡を受け取ったロンがレンズを覗き、「本当だ」と呟く。
スネイプがハリーの箒に呪いを?
それが信じられず、シオンも双眼鏡を借りる。
覗いてみれば、彼らの言う通り、セブルス・スネイプが瞬きもせずにハリーを見つめ、何かを呟いているようだった。
「僕たち、どうすりゃいいんだ?」
「私に任せて」
決意の表情を固めるハーマイオニーに、シオンは慌てて「ちょっと待って!」と彼女を止める。
「まだ、スネイプ先生の仕業だって決まったわけじゃないでしょ?」
双眼鏡で見たから、彼がハリーの件に関わっているのは間違いない。
何かしらの事情も知っていることだろう。
けれど、犯人と決めつけるのはどうだろうか。
いや、ハーマイオニーたちが、スネイプを犯人だと仮定するのは、とても自然なことだ。
だが、シオンには一種の勘のようなものが働いていた。
セブルス・スネイプは、トロールの件も、ハリーの箒の件も、犯人ではない。
実際、双眼鏡で彼を覗いたときに、闇に属する力の欠片も感じられなかった。
けれど、それを伝える手段を持っておらず、少女の制止にハーマイオニーは眉を寄せる。