第13章 姫巫女とクィディッチ
「いったい、ハリーは何をしとるんだ? あれがハリーじゃなきけりゃ、箒のコントロールを失ったんじゃないかと思うわな……ハリーに限って、そんなこたぁ……」
ブツブツと呟くハグリッドを他所に、ヒマワリがほっそりとした指でシオンの肩に触れる。
「シオンさま、お顔が真っ青ですわ。具合でも悪いんですの? 寮へ戻ります?」
心配そうに顔を覗き込むヒマワリに、シオンは反応を返すことができなかった。
観客もようやくハリーの様子に気づいたらしく、あちらこちらで悲鳴が上がる。
シオンがハリーを見上げれば、ぐるぐると回る箒に、彼はどうにかしがみついているところだった。
けれど、安心して見ていられる時間などない。
次の瞬間には、箒が激しく揺れ、ハリーを振り落とそうとしている。
そしてとうとう、箒に弾き出されたハリーが、片手で箒にぶら下がった。
それを目撃したネビルとマリアが、青い顔で悲鳴を上げると、同時に目をギュッと瞑る。
観客席から同じように悲鳴が上がる中で、シオンはハリーへ目を凝らした。
大きな黒い瞳で見つめると、そこにはおぞましい気配のする靄が彼にまとわりついている。
「フリントがぶつかったときに、どうかしちゃったのかな?」
シェーマスの推測に、シェリルがすぐさま否定した。
「それは無理。よほど強い闇の魔術以外で、箒に魔法を掛けるなんてできない」
「シェリルの言う通りだ。チビどもなんぞ、ニンバス二〇〇〇に手出しはできん」
ハグリッドもシェリルに続くが、原因の分からないハリーの動きに戸惑っているのか、二人の声は微かに震えている。
「だったら、ハリーくんはいったい……」
心配そうに眉を下げるシャーロットに、シオンは震える唇を開いた。