第13章 姫巫女とクィディッチ
何が起こったのか分からず周りを見れば、ヒマワリは退屈そうにしていて、シェリルは身体を前のめりにして観戦している。
マリアは青い顔で俯いてたままで、シャーロットは澄んだ瞳でグラウンドの上空を見上げていた。
何が変わったわけでもない。
しかし、周囲の歓声や熱気が、どこか遠くに感じられる。
気がつけば、試合の攻守は逆転し、スリザリンが攻撃に転じていた。
クアッフルはスリザリンのキャプテンであるマーカス・フリントが手にしている。
ボールを奪おうと、グリフィンドールのチェイサーが迫るが、彼はそれをグングンと抜いていった。
しかし、それも長くは続かない。
暴れ玉の異名を持つブラッジャーがフリントの顔面に勢いよくぶつかったのだ。
『あ、ブラッジャーがフリントの顔面に直撃しました。鼻をへし折るといいんですが――ほんの冗談です、先生――スリザリンの得点です。あーあ……』
ブラッジャーが直撃した衝撃でフリントが落としたクアッフルを、同じくスリザリンのチェイサーが拾ってグリフィンドールのゴールへ投げ入れる。
面白くなさそうなジョーダンのため息は、しっかり会場に届いた。
だが、シオンはそれどころではなかった。
ゾワゾワと背筋を這い回る悪寒は治る気配を見せず、シオンはその原因を探るべく意識を集中させる。
そして、その正体にようやく気がついた。
「ハリー……?」
その呟きが聞こえたらしく、ハグリッドが「ん?」と反応してくれる。
持ってきていた双眼鏡でハリーを見たハグリッドが、怪訝な声で唸った。