• テキストサイズ

ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第4章 姫巫女とホグワーツ行特急列車


「手伝おうか?」

 そう声を掛けてくれたのは、先ほどぶつかった赤毛の双子の片割れだ。
 確か、ジョージと呼ばれていたはず。

「ありがとうございます、ジョージさん」

「え……僕が分かるの?」

 名前を呼ばれたことより、名前を当てられたことに驚いているのか。
 躊躇うことなくジョージの名前を呼んだシオンに、当の彼は目を丸くする。
 そんな彼に、少女は「えっと……」と困ったように返すしかなかった。

 そこへ、フレッドがジョージを呼ぶ。

「何してんだ、ジョージ?」

「フレッド、ちょうどいいところに。少し手伝えよ」

 双子が協力してくれたおかげで、ハリーとシオンの荷物が、無事にコンパートメントへ納まった。

 礼を言いながら、シオンはゆっくりと呼吸を整える。

 体力を使ったせいか、秋だというのに暑くて仕方なかった。
 少年も、黒い髪をかき上げて額の汗を拭う。

 その額に、稲妻の形をした傷を見つけて、シオンは目を丸くした。

「その傷……」

 そう言ったのはフレッドの方だ。

 もちろん、魔法使いで知らない人などいるはずもない。
 稲妻の傷を持った、『生き残った少年』の伝説を。

「驚いたな。君は……?」

「彼だ。そうだろう?」

 双子の言っている意味が分からない少年が、「何が?」と首を傾げる。


「「ハリー・ポッターさ!」」


 フレッドとジョージが声を揃えると、少年はそれに頷く。

「うん、そうだよ。僕はハリー・ポッターだ」

 自分の名前にどれだけの意味があるのかを知らないのか。
 少年はあっさりと軽く肯定した。

 シオンは、ハリーの名前に強い衝撃を受ける。
 耳の奥で、父の言葉が蘇った。


 ――「シオン、ハリー・ポッターとはできるだけ関わりを持つな」


 強い力は、栄誉だけでなく災いも呼ぶ。

 しかし、目の前の少年は、どう見てもただの子どもだ。
 とても、栄誉や災いをもたらすようには見えなかった。

 分かっていたなら声など掛けない。
/ 362ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp