第13章 姫巫女とクィディッチ
「もう……今のはジョージさんだよ。ほら!」
グラウンドの空を飛ぶジョージがシオンに気づいたようで、軽く手を振ってきた。
それに気恥ずかしさを覚えて小さく振り返すと、ゾワリと悪寒が走った。
「……シオンさま……? あの男とはいったいどういう関係ですの……?」
「ひ……っ、え……? か、関係って……別に……」
黒いオーラを出すヒマワリに身を引けば、彼女の隣に座っていたシャーロットも、強張った表情で距離を取っている。
ど、どうしよう……。
話を逸らそうとして、シオンは選手たちを指差した。
「ひ、ヒマワリ! ほら、グリフィンドールがボールを取ったよ! 応援しよう、ね?」
「シオンさまがそういうなら……」
ツーンとそっぽを向いたヒマワリに戸惑いながらも、シオンは試合へ意識を戻す。
クアッフルを運んでいるのは、最初にクアッフルを取ったアンジェリーナだ。
前方に阻むものはなく、ゴールまで一直線に飛んでいく。
得点されまいと、スリザリンの選手がブラッジャーを打ちつけるが、彼女はそれを華麗に躱して突き進んだ。
ゴール直前では、スリザリンのキーパーであるレッチリーが待ち構えていたが、飛び掛かろうとする彼もアンジェリーナは躱した。
そして――。
『ゴ――――ルッ! グリフィンドール、先取点!』
途中から「頑張れ!」「今だ、アンジェリーナ!」と、私情を含んだ実況をしていたジョーダンだったが、それをマグゴナガルが注意しなかったのは、同じ思いを抱いていたからだろうか。
「やったぁ! ヒマワリ、見た⁉ あのチェイサーの女の人、すっごいよ!」
「えぇ、もちろん見ましたわ。シオンさまの弾ける笑顔を」
全く見ていないではないか。
ヒマワリに話を振るのはやめよう。
大歓声の上がるグリフィンドールの観客席に対し、スリザリンの観客席からはブーイングとため息が漏れた。