第13章 姫巫女とクィディッチ
「高所恐怖症でここに来たことが、マリアにとっては応援する意志の現れ。その意気込みは分かってあげてほしい」
「そうですね。マリアちゃんには、『試合を観ない』という選択肢もあったわけですから」
フォローするシャーロットとシェリルの声は、マリアには届かなかった。
「ネビル、手を貸して。旗を見てるだけじゃ不安だから。落ちそうになったら、しっかり引っ張ってよ」
「箒に乗って試合してるわけじゃないのですから、落ちることなんてないと思いますけど?」
「分からないじゃない! 暴走したブラッジャーが観客席に落ちてきて、そのまま……!」
ヒマワリの言葉に、観客席が崩壊する想像をしたようで、ネビルの手を握ったまま、マリアが青い顔をして頭を抱える。
「大丈夫だよ! ほら、手はちゃんと握ってる!」
繋いだ手を見せてにっこりと笑うネビルを見て、シェーマスがヒマワリに声を掛けた。
「ヒマワリ、ヒマワリ! 僕も手を握ってあげようか?」
「必要ありませんわ。さぁ、シオンさま。あたくしたちも手を握っていましょうか?」
「え、えっと……わたしは大丈夫……かな?」
「あら、残念」
そういう割には、シオンの隣の席を取れただけで嬉しいようで、ヒマワリは少し上機嫌だ。
シェーマスも、ヒマワリに振られて落ち込んでいるが、ヒマワリの顔が見える斜め上の席を確保できただけで幸運だと語った。
試合開始までもう間もなく。
シオンたちも含めて、全員が固唾を呑んでグラウンドを見つめていた。
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