第13章 姫巫女とクィディッチ
「月映さま」
『シオンよ、深く考えるな。そなたはハリーの応援だけしておけ』
「け、けど……」
『良い……我のシオンに懸想しおって。ウィーズリーの双子の片割れ……その顔と名前、忘れぬぞ……』
ブツブツと何事かを呟く使い魔はそっとしておこう。
長年のつき合いで、今は触れない方がいいのだと学んだ。
とりあえず、グリフィンドールを応援すればいい。
そう結論づけて、シオンは席へ戻ったのだった。
* * *
十一時には、学校中がクィディッチ競技場の観客席に詰め掛けていた。
シオンは、ロンやハーマイオニー、同室のマリア、シャーロット、シェリル、ヒマワリの四人、ハリーと同室のネビル、シェーマス、ディーンと大人数で、最上段の席に陣取る。
高所恐怖症のマリアは、「問題ないわ!」と言いながらも青い顔で震えていた。
ロンたちは、ハリーをびっくりさせてやろうと、シーツで作った大きな旗を掲げている。
旗に描いてあるグリフィンドール寮のシンボルであるライオンは、絵が上手いディーン・トーマスが描いたらしい。
それを見たハーマイオニーが、少し複雑な魔法を掛けて、絵が様々な色に光るようにした。
「わぁ……すっごくキレイ!」
「まぁ、綺麗なことは認めますけど……シオンさまの美しさに比べたら……」
比べる対象がおかしくないか?
ヒマワリの発言に訂正を入れようとしたところで、マリアが「これよ!」と手を叩く。
「そうだわ! 試合じゃなくて、この旗を見てれば怖くないじゃない! さすが、ハーマイオニー! 今度、何か差し入れるわね!」
「別に、そんなつもりで魔法を掛けたわけじゃないんだけど……」
「旗を見てるだけじゃ、応援に来た意味がないんじゃないかな?」
ハーマイオニーとネビルが呆れたように呟くが、マリアには聞こえない。