第13章 姫巫女とクィディッチ
「ハリー、しっかり食べないと保たないよ?」
心配そうにシェリルが声を掛けるが、彼はゆるゆると首を振った。
「何も食べたくないんだ」
「トーストを少しだけでも齧ったら?」
ハーマイオニーも優しく諭すように言うが、ハリーは手をつけようとしなかった。
シオンも心配で声を掛けようと思ったが、あまりしつこくしてはハリーが気を悪くすると思い、口をつぐむ。
「あのね、ハリー。シーカーって、とても狙われやすいの。ケガをする選手の大半はシーカーなんだよ。黄金のスニッチを取られたら負けちゃうから。だからね、体力をつけておかないと、ハリーが危ないの」
いつもよりも口数多く、お願いするようにシェリルが言う。
その言葉に、ようやくハリーはトーストをちぎり始めた。
ソーセージを食べる元気はないようだが、トーストくらいなら食べる気になったようで、安心する。
おそらく、気が高ぶり過ぎて眠れず、昨夜の疲れが抜けきっていないのだろう。
緊張しているのもあるのかもしれない。
「ハリー、大丈夫かな……?」
そこへ、遠くから名前を呼ばれたような気がして、シオンは振り返った。
視線を向けた先では、赤毛で長身の男子生徒が手を振りながら、「シオン!」と手招きしている。
それを見たロンが、チキンを飲み下して口を開いた。
「シオン、フレッドが呼んでるみたいだよ」
「違うよ、ロン。フレッドさんじゃなくて、ジョージさんだよ」
ちょっと行ってくるね、と断って席を立つ。
小走りで駆け寄ると、やはりそこにいたのはジョージ・ウィーズリーだった。