第13章 姫巫女とクィディッチ
いや、シオンもそう思っていたのだ。
例の怪我の件も合わせて、ハリーやロンがスネイプを怪しむのも不思議ではない。
月映の話を聞いていなければ、シオンも二人に同調していただろう。
マリアたちから視線を外し、シオンはヒマワリの隣へ腰を下ろした。
「ヒマワリ。ヒマワリもスネイプ先生のこと、ヒドイ人だって思う?」
「スネイプですか? そうですね。正直に申し上げていいのなら、興味ありませんわ。あたくし、シオンさま以外の人間に関心がありませんの。スリザリンの寮生を贔屓しようが、グリフィンドールの寮生に厳しかろうが、はっきり言ってどうでもいいです」
シオンさまがあの男にイヤな思いをさせられていなければ、ですけれど。
その回答に、シオンは何も言えなかった。
どうやら、ヒマワリに意見を求めたことが間違いだったようだ。
甘えるようにしてすり寄ってくるヒマワリに笑みを返しながら、シオンはケルベロスの守る扉の向こうへ思いを馳せた。
あの扉の向こうに何があるのか。
セブルス・スネイプは、いったい何をしようとしているのか。
どれだけ考えたところで、答えのない迷宮に惑わされるだけで、どこへ辿り着くこともできなかった。
* * *
ハリーの初試合は土曜日。
寮は四つのため、今日のグリフィンドール対スリザリンの試合で勝てば、グリフィンドールは寮対抗総合の二位に浮上する。
夜が明けて、当たり前のようになった寒い朝がやって来た。
大広間には朝食の良い香りが漂っている。
クィディッチの試合を楽しみにしている生徒は多く、大広間はその話題で持ちきりだ。
そんな中、ハリーを中心にして重たい空気が広がっている。