第13章 姫巫女とクィディッチ
『何を隠しておるのかは聞かぬ。そなたにはそなたの思惑があり、役目があるのだろう。だが、用事のある生徒を一方的に追い返すのは、どうかと思うがな?』
月映が赤い瞳を細めてそう言うと、スネイプは低く舌打ちをし、一冊の本を取り出した。
「これであろう?」
『クィディッチ今昔』の本を持ってハリーへ手渡す。
「用事が済んだのならば、さっさと寮へ帰れ。旧友の使い魔の顔を立てて、今回の減点は控えてやる」
ありがとうございます、とハリーが本を受け取り、先に寮へ引き返した。
その後ろをシオンも続こうとして、月映がついて来ていないことに気づき、足を止める。
「……月映さま?」
振り返れば、スネイプと月映はまだ睨み合っていた。
『そなた、随分と嫌われておるな。もう少し周囲に気を配らねば、余計な勘ぐりをされるぞ』
「ふん、嫌われるのは慣れている……主人が待っているぞ。さっさと行け」
スネイプが背中を向ける。
それを見て、月映がシオンの元へ帰ってきた。
「月映さま、スネイプ先生は……」
『いちいち怯える必要はない。あれはただ不器用なだけの人間だ。あそこまで行くともはや病気だがな。人の好意に鈍感で、悪意に敏感。その上、気の遣い方も下手だ。一言で済ますなら、あの男は偽悪者よ。望んでやっているのか、そうではないのかは分からぬが。あやつは自ら進んで悪役を引き受けようとする』
「悪役を……?」
聞き返すが、月映は答えを返すことなく姿を消す。
そこへ、ハリーが引き返してきた。
「シオン、遅いから心配したよ。まだスネイプに捕まっているのかと……」
「ううん、ごめんね。早く戻ろう?」
* * *