第13章 姫巫女とクィディッチ
「忌々しいヤツだ。三つの頭を同時に注意するなんてできるのか?」
三つの頭。その単語で思い出すのは、立ち入り禁止の四階廊下にいた三頭犬――『ケルベロス』。
そして、例のトロールの一件の最中、四階へ向かっていたスネイプを見かけたこと。
その二つが結びつくと同時に、見てはいけないものを見てしまった事実から、シオンは身を引いた。
ハリーもシオンと同じ気持ちらしく、ソッとドアを閉めようとする。
しかし、それは一歩遅かった。
二人の気配を察したのか、唐突にドアへ黒い視線を向けたスネイプと目が合ってしまったのだ。
「ポッター! リュウグウ!」
怒鳴るように名を呼ばれ、シオンとハリーの肩が跳ねる。
見てはいけない場面だったようで、怒りに顔を歪めるスネイプは、ガウンの裾を下ろし、足を隠して続けた。
「すぐに出て行け!」
シオンが「ひっ」と小さく悲鳴を上げると、視界に金色の軌跡が過ぎる。
『そう喚(わめ)くでない、セブルス・スネイプ』
現れたのは、月映だ。
黄金の蛇のような龍に、スネイプが目を瞠る。
「お前は……確か、リュウグウと一緒にいた……」
スネイプの指すリュウグウが自分ではないことに気づき、彼も父と同じ時期にホグワーツで学んだのだと察した。
『ふっ……覚えておったか。然様。シオンはアレの娘よ。まさか、そなたが教師になろうとは、あのときは思わなんだがな』
喉の奥で押し殺すように笑う月映に、スネイプは不愉快そうに眉を寄せる。