第13章 姫巫女とクィディッチ
『太った婦人(レディ)』の絵画の後ろを潜り抜け、シオンは職員室まで急いだ。
その途中で、目的の人物の後ろ姿を見つける。
「待って、ハリー!」
振り返った少年は、緑色の瞳をパチクリとさせて少女を呼んだ。
「シオン、ついて来たの?」
「うん……なんだか、気になっちゃって……」
そうシオンが困ったような表情で言うと、ハリーも同じような表情で「そっか」と眉を下げた。
「実は、一人じゃ心細かったから助かったよ」
互いに顔を見合わせ、小さく笑う。
やがて、職員室まで来ると、ハリーがドアをノックした。
しかし、中からの応答はない。
もう一度ノックしたが、やはり返事はなかった。
無言で目配せをして、ハリーが少しだけドアを開けて中の様子を伺う。
いっそのこと、スネイプが本を机に置きっ放しにしてくれていると、会わずに済むのだが。
そこまで考えて、それは無理かと思う。
本がなくなれば、真っ先にハリーが疑われ、またグリフィンドールが減点されることになるのだ。
それを考えると、やはりしっかり話して返してもらった方が良さそうだ。
ドアから中を覗いて、二人は息を呑んだ。
職員室内には、セブルス・スネイプと管理人のアーガス・フィルチの二人しかいないのだ。
スネイプは黒いガウンを膝までたくし上げている。
そこから見える足は血だらけで、目を背けたくなるほどズタズタになっていた。
ロンは、「歩くのも痛いと嬉しい」と昼間話していたが、あれでは歩いていなくても痛いはずだ。
彼は今日も一日、顔色も変えずに生徒と接し、いつも通りに授業をしていた。
その強靭な精神力に、シオンはただただ驚くことしかできなかった。
しかし、本を返してもらうとなれば、スネイプもフィルチも、話してどうにかなる人間ではない。
下手なことを言えば、意味もなく減点される可能性すらある。
引き返した方がいいかもしれない。
そう思っていると、フィルチがスネイプに包帯を渡しながら口を開いた。