第12章 姫巫女とトロール
「結局、またシオンに助けられちゃったね」
ハリーの言葉に、シオンはゆるゆると首を振る。
「そんなことないよ。二人だって、トロールを倒したじゃない」
「すぐに起き上がったけどね」
ロンがすかさず言うが、それでも評価されることだろう。
『太った婦人(レディ)』の肖像画の前で「《豚の鼻(ピッグスナウト)》」と合言葉を口にし、中へ入れてもらう。
談話室では、グリフィンドール生たちがパーティーを楽しんでいた。
「シオンさま! 今までどこに⁉︎ トロールが出たというのにお姿が見えなくて、心配していましたのよ⁉︎」
すぐさま駆け寄ってきたヒマワリに、シオンは曖昧に笑って誤魔化す。
この様子では、「トロールと対決していました」などとは言えない。
「またハリーたちに巻き込まれてたんでしょ?」
「今度はあたしも行く」
「では、そのときはぜひ私もご一緒させて下さい」
マリア、シャーロット、シェリルも集まってくる。
「その頬……」
「あ……えっと……」
少女の頬の傷に気づき、ヒマワリは顔を伏せた。
何か言おうと口を開く彼女を止め、シオンはふわりと微笑む。
「大丈夫、何もないよ。わたしは大丈夫だから……心配かけてごめんね?」
そう言って、シオンは彼女たちと別れ、扉の傍にポツンと一人でいるハーマイオニーのもとへ向かった。
ハーマイオニーの傍には、すでにハリーとロンの姿もある。