第12章 姫巫女とトロール
「このトロールは、お前たち三人で倒したのか?」
質問の意図が分からず、三人は顔を見合わせる。
三人が揃って口を開こうとして、一斉に話しては分からなくなることに気づき、シオンとロンはハリーに説明を委ねた。
「あ、えっと……僕とロンで相手をして、一度は気絶させたんですけど……すぐに目を覚ましちゃって……結局、最後はシオンが……」
そこまで話して、ハリーがチラリとシオンを見る。
「あっ、あの……っ、べ、別にわたしが倒したわけでは……! その……《九尾の妖狐》を喚(よ)んで、倒してもらったので……!」
自分は《九尾の妖狐》である久遠を喚んだだけで、それ以外には何もしていない。
それを、自分の手柄として誇示をすることはできなかった。
「《九尾の妖狐》……東方のモンスターだな」
コクンコクンとシオンは何度も頷く。
どうにも、スネイプは苦手だ。
授業は分かりやすくて好きだが、この独特の威圧感には緊張してしまう。
「分かった。行け」
ようやく緊張から解放され、シオンは頭を下げてその場を立ち去った。
* * *
しばらく黙って歩いていた三人は、階段を二つ上がったところで、肩の力を抜く。
「三人で十五点か……ちょっと少なくない?」
最初に口を開いたのはロンだった。
「三人で十点だろ。ハーマイオニーの五点を引くと」
ハリーが訂正するが、本来なら、ハーマイオニーが減点される理由などなかったのだ。
三頭犬と遭遇した日も、彼女は言っていた。
――「私が変身呪文を知ってたおかげでマグゴナガル先生が下さった点数を、あなたたちがご破算にするんだわ」
それくらい、自分の評価を気にしていたのだ。
その心境を考えると、素直に点をもらったことで喜ぶことはできなかった。