第12章 姫巫女とトロール
「グレンジャーさん。さっきは、ありがとうございました」
頭を下げて礼を言うと、ハーマイオニーは一度プイッとそっぽを向いた。
「こちらこそ、ありがとう」
次いで、はにかんだように笑む。
「ハーマイオニーでいいわ。さっきも、そう呼んだでしょ」
「え……?」
そうだっけ、と思ってハリーとロンを見れば、二人は彼女の言葉を肯定するように頷く。
全く身に覚えがないのだが、無意識に呼んでいたのか。
どちらにせよ、名前を呼んでも構わないと認めてもらえたことに、シオンは嬉しくなる。
「うん! よろしくね、ハーマイオニー!」
自分が笑えば、笑みを返してくれる。
それは、山の中の神社にいただけでは、得られないものだ。
シオンはもう、家に帰りたいと思うことはほとんど……いや、家に帰りたいと思うことは、なくなっていた。
ホグワーツに入学した頃とは全く違う自分がここにいる。
きっと、父も驚くだろう。
そして、このときのシオンは忘れていた。
ハリー・ポッターという少年が背負った宿命と、その先に待ち受ける恐ろしい存在に……。