第12章 姫巫女とトロール
やがて、話を聞いていたマグゴナガルが「そういうことでしたら……」と頷いた。
そして、改めてハーマイオニーへ向き直る。
「ミス・グレンジャー、なんて愚かしいことを。たった一人で野生のトロールを捕まえようなんて、そんなことをどうして考えたんです」
項垂れるハーマイオニーに、シオンたちは何も言えなかった。
彼女自身が望んだこととはいえ、こんな理不尽なことを許していいのだろうか。
「ミス・グレンジャー。グリフィンドールから五点減点です。あなたには失望しました。怪我がないなら、グリフィンドール塔へ帰った方がいいでしょう」
マグゴナガルの話では、先ほど中断したハロウィーンパーティーの続きを寮でしているらしい。
自分も早く帰りたいなぁ……と思うが、そんなことを言えるはずもなく。
立ち去るハーマイオニーの背中が見えなくなると、エメラルドの魔女がシオンたちを見る。
「先ほども言いましたが、あなたたちは運が良かった。しかし、大人の野生のトロールと対決できる一年生は、そうざらにはいません」
そして、マグゴナガルは少しだけ表情を和らげた。
「よって、一人五点ずつ差し上げましょう。あなたたちの幸運に対してです。ダンブルドア先生にはわたくしが報告しておきます」
寮へ帰るよう促され、三人は「ありがとうございます」と揃って頭を下げ、女子トイレから出る。
点数をもらったことで、ますますハーマイオニーに申し訳ない。
表情がにやけないようにと気を張るハリーやロンとは反対に、シオンは申し訳なさそうに眉を下げていた。
それを「待て」と低い声が呼び止める。
振り返れば、スネイプが三人を見ながら、訝しそうな表情をしていた。
おそらく、トロールの負った傷と三人の力量が合わないからだろう。