第12章 姫巫女とトロール
「殺されなかったのは、運が良かった。寮にいるべきあなた方が、どうしてここにいるんですか?」
上手い言い訳も見つからず、シオンはただ俯く。
そのとき、シオンたちの後ろからハーマイオニーが進み出た。
「マクゴナガル先生、話を聞いて下さい! 三人は私を探しに来たんです!」
「ミス・グレンジャー⁉︎」
おそらく、マグゴナガルの視界にハーマイオニーは映っていなかったのだろう。
信じられないものを見たように、ミネルバ・マグゴナガルは目を丸くした。
「私がトロールを探しに来たんです。私、本で読んでトロールのことは知っていましたから、一人で倒せると思いました」
驚きのあまり、シオンは何を言うこともできなかった。
ハーマイオニー・グレンジャーは、勤勉で真面目で、間違ったことを許さない正しさを持ち合わせている。
そんな彼女が、シオンたちを庇うために、自ら教師たちへ嘘を述べているのだ。
驚かないはずがない。
「もし、三人が見つけてくれなかったら、私は今頃死んでいました。三人とも、誰かを呼びに行く時間がなかったんです。三人が来てくれたときには、私はもう、殺される寸前で……」
スラスラと、嘘八百を述べる彼女に、シオンは「違います。わたしたちが勝手にやったことです」と言おうと口を開いた。
このままでは、ハーマイオニーが悪者になってしまう。
しかし、それに気づいたのか。
ハーマイオニーが足を軽く蹴って止めてきた。