第4章 姫巫女とホグワーツ行特急列車
「フレッド、次はあなたの番よ」
赤毛の婦人が、今度はフレッドを呼んだ。
しかし、そのフレッドが母を責めるように口を開く。
「僕はジョージだよ。全く、母親のくせに、僕らの見分けがつかないの?」
シオンは首を傾げた。
先ほど会ったから分かる。
ジョージだと言っている少年は、母が呼んだ通りフレッドだ。
いくら双子でも、顔つきや声音が微妙に異なり、全く同じ人間など存在するはずがない。
双子の見分けがつくのは、シオンが昔から、動物の見分けも得意だったからだろうか。
「ごめんなさい、ジョージ」
謝る母に、フレッドとジョージがクスクスと笑う。
「冗談だよ。僕がフレッドさ」
そう言って、フレッドが柱へ消えた。
ジョージもその後に続いて柱に消える。
フレッドとジョージが柱に消えたことに驚いていた黒髪の少年が、意を決したように赤毛の婦人へ「すみません」と声を掛けた。
黒髪の少年に気づいて、婦人も「あら」と微笑む。
「こんにちは、坊や。ホグワーツは初めて? ロンもそうなのよ」
赤毛の婦人は、最後に残った少年を指した。
細身の背が高い少年だ。
「はい。でも、行き方が分からなくて……」
シオンも遅れないように、彼らに駆け寄った。
「あ、あの……わ、わたしも、一緒に……」
行き方が分からないわけではないが、一人で行くのは心細い。
「あなたもホグワーツね。大丈夫、心配しなくていいわ。九番と十番の間の柱に真っ直ぐ歩けばいいの。立ち止まったり、怖がっちゃダメよ」
怖かったら、少し走るといいわ。
「さぁ、ロンの前に行って。その次はお嬢ちゃんね」
実践してみるのが早いと思ったのだろう。
婦人はシオンたちに並ぶよう言った。
黒髪の少年はカートごと柱の正面に立ち、ゆっくりと歩く。
やがて勢いをつけて走り出し、柱へ吸い込まれるように消えた。