第11章 姫巫女とハロウィーン
「監督生よ。すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮へ帰るように」
校長の言葉を受け、監督生たちはすぐに自分の寮の生徒を集め始めた。
シオンも、「グリフィンドール寮!」と呼ぶ監督生パーシー・ウィーズリーの元へ急ぐ。
そこへ、見覚えのある二人の少年と目が合った。
「ハリー、ロン!」
「シオン、良かった」
ロンがホッとしたように表情を和らげる。
「シオン、シェリルたちは?」
「大広間までは一緒だったんだけど、途中ではぐれちゃって……でも、パーシーさんについて行ってると思う」
マリアやシャーロットが一緒なら、きっと大丈夫だ。
シェリルやヒマワリを、ちゃんと連れて行ってくれるはず。
そう、自分に言い聞かせた。
大丈夫、大丈夫。
トロールという得体の知れない怪物が、同じ校内にいるという恐怖。
顔の見えない友人を心配する不安。
シオンはそれらを、どうにか押し殺す。
「それにしても……いったい、どうやってトロールは入って来たんだろう?」
階段を上がりながらハリーが疑問を口にするが、それに対する回答など誰も持ってはいない。
「そんなの分かんないよ。トロールって、とってもバカなヤツらしいよ。もしかしたら、ハロウィーンの冗談のつもりで、ピーブズが入れたのかな?」
「いくらイタズラ好きでも、ピーブズはそんなことしないよ!」
さきほど、笑顔で金平糖を受け取ってくれたピーブズを思い出す。
確かに捻くれ者で、たまにとんでもない悪戯を仕掛けてくるが、シオンはピーブズを嫌いにはなれなかった。