第11章 姫巫女とハロウィーン
混雑する廊下で、グリフィンドールはハッフルパフの一団とすれ違う。
そこで、シオンはようやく思い至り、ハリーとロンのローブを掴んだ。
「待って、二人とも!」
思い出して、声が震える。
「ぐ……グレンジャーさんは? グレンジャーさんはどこ?」
グレンジャーというのが誰かすぐにピンとこなかったようだが、一拍遅れてハーマイオニーのことだと分かり、ハリーとロンが顔を見合わせる。
「さっき、パチルさんが言ってた。トイレで泣いてたって。一人になりたいから放っておいてほしいって……そう言われたって……」
拙く話すシオンに、ロンが苦い表情をした。
ハリーの話によると、自分に対するロンの悪態を聞いたハーマイオニーは、泣きながら走り去って行ったのだと言う。
どこでどう時間を過ごしていたのかは知らないが、パーバティの話から推測するに、まだトイレにいる可能性は高い。
「どうしよう……」
青い顔をするシオンが何を言いたいのか、ハリーも察した。
「ハーマイオニーは、トロールのことを知らないよ」
二人の推測に、ロンは唇を噛んだ。
トロールのことはともかく、ハーマイオニーが危険な状況に陥っている責任の一端が、自分にあると思ったのだろう。
言外に「助けに行かなければ」と言う二人に、ロンは頷いた。
「分かった。だけど、パーシーに気づかれないようにしなきゃ」
周囲とパーシーの様子を伺いながら、三人は反対方向へ行くハッフルパフ寮生に紛れ込んだ。
そこへ、慣れた気配の横を通る。
聞き覚えのある声に「シオンさま?」と呼ばれた気がしたが、ハーマイオニーのことで頭がいっぱいになっていたシオンには届かなかった。