第11章 姫巫女とハロウィーン
「さっきのさ……コンペイトウ……だっけ? 今度、また分けてよ。気に入ったからさ」
「本当ですか⁉︎ はい、喜んで!」
自分の好きなモノを好きだと言ってもらえるのは嬉しい。
ジョージの言葉が嬉しくて、「ありがとうございます!」と笑うと、彼は大きな手で鼻から口元を覆って顔を隠した。
赤い髪から覗く耳が、心なしか髪と同じ色に染まっているような気がする。
「どうしたんですか? どこか具合でも……?」
どこか具合でも悪いのではないかと訊くと、ジョージは勢いよく首を振った。
「い、いや! 何でもないよ、何でも!」
「そうですか? なら、いいんですが……」
歯切れの悪い返事に首を捻るも、本人が言うなら何でもないのだろう。
「じゃあ、フレッドが待ってるし、僕はこれで。またね、シオン!」
「はい。では、また」
大きく手を振って去って行くジョージに、シオンも小さく手を振り返した。
そこで、ようやくヒマワリたちの姿がないことに気づく。
はぐれてしまったのか、置いていかれてしまったのか。
これだけたくさんの人がいるのだから、はぐれても仕方がないだろう。
知り合いがいない状況に不安を覚え、シオンはギュッとローブの裾を握る。
そこへ、再び声を掛けられた。