第11章 姫巫女とハロウィーン
やがて、大広間のドアが開かれ、シオンは大きな瞳を見開いた。
ハーマイオニーのことが気になりつつも、目の前に広がるハロウィーン特有の飾りつけに、少女の心は奪われる。
大広間にはたくさんのおばけカボチャが浮かび、何千羽もの黒いコウモリが飛び回っていた。
テーブルに並ぶのはカボチャ料理。
パンプキンパイやパンプキンスープ、パンプキンクッキーにパンプキンパンなど、カボチャ尽くしだ。
あちらこちらでは、お菓子のやりとりも行われているようで、時おり「トリック・オア・トリート」の言葉が耳に届いた。
シオンも、いたずらされないよう、懐にお菓子を忍ばせている。
「「トリック・オア・トリート!」」
突然後ろから声を掛けられ、シオンは「ひっ!」と肩を震わせた。
振り返れば、ウィーズリー兄弟のフレッドとジョージが、してやったりと意地悪な表情で笑っている。
「お菓子をちょうだい?」
「くれないと、イタズラしちゃうぞ〜!」
ウィーズリー兄弟のイタズラは、きっとシャレでは済まないのではないだろうか。
おそらく、お菓子の準備をしておらず、すでに被害に遭っている生徒もいるかもしれない。
しかし、シオンにはすでに準備がある。
懐から手のひらサイズの小さな包みを二つ取り出し、シオンは双子に差し出した。
「と、トリート……で、お願いします」
二人は目を瞬かせ、受け取った小さな包みを解く。
チョコレートでも、キャンディでも、クッキーでもない。
包みから現れたのは、色とりどりの星だった。