第10章 姫巫女と三頭犬の隠し扉
『真夜中にフラフラして、悪い子だなぁ、一年生ちゃん?』
チッ、チッ、チッ、と鳴らしながら、ピーブスは気味の悪い笑みを浮かべた。
「ピーブス」
シオンが前に出ると、彼はビクリと身体を震わせる。
『シオン⁉︎ 君も一緒だったのか⁉︎』
驚くピーブスに、少女は続けた。
「ピーブス、お願い。わたしたちを見逃して! 夜中に抜け出すのは悪いことだけど、これには事情があるの!」
非を認めつつ懇願すれば、ピーブスは唇を尖らせてシオンを見る。
『黙っててあげるから……今度、一緒に遊んでくれる?』
「いいよ。その代わり、イタズラ以外でね」
まるで、幼い子どものように、自分を窺うピーブスに頷けば、彼はにっこりと笑った。
「ほんと、シオンがいてくれて助かったよ」
いつ騒ぎ出されるかと怯えていたロンが、肩の力を抜く。
すると、バタバタと足音が耳に届いた。
「「フィルチだ!」」
ハリーとロンはそう叫び、「早く逃げなきゃ!」と駆け出す。
ハーマイオニーとネビルもそれに続いた。
「ピーブス、ありがとう!」
『さっさと帰んな、シオン』
ピーブスに頷き、少女も彼らの後を追う。
全力で走って来るフィルチから逃げていた五人は、廊下の突き当たりのドアを開けて身を隠すことにした。
けれど、ドアは鍵が掛かっているのか、全く開かない。
シオンたちがいる廊下には遮蔽物などなく、フィルチがここへ来れば見つかってしまう。
そこへ、ハーマイオニーが杖を取り出し、「ちょっとどいて」とハリーを押しのけた。
「《アロホモラ(開け)》!」
カチャリと鍵が開き、五人はなだれ込むようにして中へ入り、ドアを閉める。
ドアに耳をつけ、外の様子を窺うと、フィルチはピーブスと話していた。