第10章 姫巫女と三頭犬の隠し扉
「あなたまで一緒だとは思わなかったわよ、シオン」
軽蔑するようなハーマイオニーの眼差しに、シオンは微かに身を引く。
「また君か! ベッドに戻れよ!」
そうロンが言い切るより早く、彼女が口早にまくし立てた。
「本当はあんたのお兄さんに言おうかと思ったのよ。監督生だから、絶対にやめさせるわ」
ロンの兄であるパーシー・ウィーズリーのことだ。
確かに、彼が出てきてしまったら、部屋へ戻るしか選択肢はないだろう。
どうしようか、とハリーとロンの様子を窺ってみる。
その二人は、うんざりとした様子でため息を吐いた。
「行こう」
「うん」
ロンの言葉にハリーが頷き、促すように二対の瞳がシオンを見る。
二人に遅れないように、シオンもグリフィンドール寮の出入口である、『太った婦人(レディ)の肖像画』の裏に隠れた穴を乗り越えた。
だが、ハーマイオニーの追及は終わらない。
何と、シオンたちを止めようと彼女も寮の外へ出てきたのだ。
「しつこいぞ!」
小さな声で怒鳴るロンに微塵も臆することなく、ハーマイオニーは続ける。
「あなたたち、グリフィンドールがどうなるか気にならないの? 自分のことばっかり気にして。スリザリンが寮杯を取るなんて、私はイヤよ。私が変身呪文を知ってたおかげでマグゴナガル先生が下さった点数を、あなたたちがご破算にするんだわ」
この言い方には、シオンもうんざりしてしまった。
頭の良さを鼻にかけている……というのは言い方が悪いかもしれないが、ハーマイオニーの自己顕示欲の強さは、シオンも得意ではなかった。