第10章 姫巫女と三頭犬の隠し扉
ハリーが退学にならないことを知って、シェリルは調子を取り戻し、しっかりと食事を摂った。
その後、ルームメイトと宿題を終わらせたシオンは、就寝時間となり、それぞれベッドに入る。
時計の秒針が響く中、シオンは冴えた黒い瞳を瞬かせて身体を起こした。
『行くのか、シオン』
「はい。放っておけませんから」
何ができるか分からないし、自分など必要ないかもしれないが。
話を聞いた以上、黙って待っていることなどできない。
時計の針が十一時半を示すのを待ち、シオンはマリアやヒマワリたちを起こさないように部屋を出た。
寝間着として着慣れた白い小袖の上に着物を羽織り、杖と紫扇を持っていることを確かめる。
グリフィンドールの談話室まで行くと、ちょうどハリーとロンも出てきたところだった。
「「シオン⁉︎」」
「ハリー、ロン。良かった、入れ違いにならなくて」
パジャマの上にガウンを引っ掛けた二人に、シオンはホッと安堵の息を吐く。
「僕らを止めに来たの?」
「それならムダだよ」
ハリーとロンに、彼女は首を振って否定した。
「違うよ。ただ、一緒に行かせて欲しいの。わたしなら、見回りをしてるフィルチ先生から姿を隠す術も使えるし……決闘には絶対に手を出さないから!」
お願い、と頼めば、二人は顔を見合わせて一つ頷いてくれる。
しかし、そう簡単に事は運ばなかった。
ポッという音が聞こえたと思えば、ランプを手に持ったハーマイオニーが現れたのだ。
先ほどの音は、ランプが灯ったものだったらしい。