第10章 姫巫女と三頭犬の隠し扉
「もちろんあるさ。僕が『介添人』をする。お前のは誰だい?」
「ロン! その意味が分かってるの⁉︎ こんなのおかしいよ!」
けれど、ロンはシオンに答えることなく、ただ真剣な瞳を向けるだけ。
話の流れを理解できないハリーを置いて、どんどん事は進んでいく。
マルフォイはクラッブとゴイルの大きさを比べるように二人を見た。
「僕の介添人はクラッブだ。時間は夜中の十二時、トロフィー室にしよう」
あの部屋はいつも鍵が開いてるんでね。
マルフォイは続け、ローブを翻して去って行った。
彼らの背中を見送り、ハリーが「あのさ」と声を掛けてくる。
「魔法使いの決闘ってなんだい? ロンが僕の介添人ってどういうこと?」
「介添人っていうのは、『代わり』のことだよ。この場合、ハリーがもしマルフォイくんの攻撃で死んでしまったら、ロンが代わりに戦うの」
ハリーの疑問に、シオンは固い声音で答えた。
そんなシオンとは反対に、ロンはすっかり冷めてしまったパイを食べながら口を開く。
「死ぬのは、本当の魔法使い同士の本格的な決闘の場合だけだよ。君とマルフォイだったら、せいぜい火花をぶつけ合う程度さ」
確かに、相手にダメージを与えられるような魔法を使えない二人なら、せいぜい火花を飛ばすのが関の山だろうが……。
それでも、危険なことに変わりはない。
「ねぇ、やっぱり断った方がいいんじゃない?」
「何言ってんのさ! ここで断ったら、僕らがビビって逃げたみたいじゃないか!」
「でも……」
言い募ろうとするが、二人は引く気などないようだ。