第10章 姫巫女と三頭犬の隠し扉
心配そうに眉を下げて顔を伏せるシオンの黒髪を、ジョージがやや乱暴にかき混ぜる。
「大丈夫だって。ハリーや仲間がケガしないように、僕たちビーターがいるんだからさ」
ジョージの言葉に頷いたフレッドが、「あ」と声を上げた。
「ジョージ、そろそろ行こうぜ」
「あぁ、そうだったな」
示し合せる双子に、シオンたち三人は揃って首を傾げる。
「実はさ、リー・ジョーダンが、学校を出る秘密の抜け道を見つけたって言うんだ」
「まぁ、僕たちが最初の週に見つけちまったヤツだと思うけどね」
手を振って去っていく双子と入れ替わるように、クラッブとゴイルを引き連れたマルフォイがやって来た。
反射的にシオンの身体が強張る。
「最後の食事かい、ポッター? マグルのところに帰る汽車にはいつ乗るんだい?」
「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」
どう見てもクラッブやゴイルは小さくないが。
大広間の上座には教師たちが座っているため、彼らも不用意な真似はできないようだ。
「そこまで言うなら、僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。ご所望なら今夜だっていい」
マルフォイが静かな瞳でハリーを見据え、低く続けた。
「……『魔法使いの決闘』だ。杖だけで、相手には触れない」
「待って、そんなこと……」
魔法使いの決闘は、子どものケンカレベルでは終わらない。
相手を死に至らしめることすら良しとする、本物の決闘だ。
口を挟んだシオンを、マルフォイが一睨みして黙らせ、視線をハリーへ戻す。
「どうしたんだい? 魔法使いの決闘なんて聞いたこともないんじゃないの?」
鼻で嗤う金髪の少年に、ロンが進み出た。