第10章 姫巫女と三頭犬の隠し扉
「来週から練習が始まるんだ。でも、誰にも言っちゃダメだよ。ウッドが秘密にしておきたいって」
そこへ、双子のウィーズリー兄弟が大広間に入って来た。
ハリーを見つけて近づいてくる双子に、シオンたちの話を黙って聞いていた月映が音もなく消える。
「すごいな、ハリー」
「ウッドから聞いたよ」
どうやら、クディッチの代表選手に大抜擢されたことを言っているらしい。
「僕たちも選手なんだ」
「ポジションは『ビーター』」
「「ビーター?」」
聞き慣れない言葉にシオンとハリーの疑問が重なる。
「『ブラッジャー』から味方を守る役さ。もっと言うと、その『ブラッジャー』を敵に叩きつけるんだけどね」
『ブラッジャー』というボールは、選手を箒から叩き落とすべく暴れる鉄球らしい。
それを聞いたシオンは顔を青くして頬に手を当てた。
「そ、そんなの当たったら死んじゃうよ……!」
クディッチという競技をよく知らないシオンは、箒に乗ってボールを追いかけるゲームだと思っていた。
だが、話を聞く限り、そんな生易しいものではないようだ。
「今年のクディッチ・カップは頂きだな」
「抜群のチームになりそうだ」
クディッチでキャプテンをしていた兄、チャーリー・ウィーズリーが卒業してから、グリフィンドールは優勝できていないのだと双子は続けた。
しかし、はしゃぐ双子とは対照的に、シオンは同じように喜ぶことはできない。
確かに、魔法界では骨折程度ならすぐに治る。
けれど、打ち所が悪くて致命傷を負ってしまったら?
箒から転落なんて、死んでもおかしくはない。